深い呼吸はなぜ大切?西洋医学と東洋医学から考える、心と体のケア
「気づくと息を止めている」「肩に力が入り、呼吸が浅くなっている気がする」
忙しい毎日の中で、そんなふうに感じることはありませんか。
呼吸は、全身の細胞の働きを支え、神経の働きや心と体の緊張とも関わっています。今回は、無理なくゆったり呼吸できることの大切さを、西洋医学と東洋医学の両方からお伝えします。
「深い呼吸」とは、力いっぱい吸うこと?
この記事でいう深い呼吸とは、胸やお腹が自然に動き、無理なくゆったり息を吸って吐ける呼吸のことです。
大きく吸うことを頑張りすぎると、かえって肩や胸に力が入ることもあります。大切なのは、呼吸の大きさを競うことではなく、心地よく呼吸できることです。
西洋医学の視点:呼吸は細胞と神経の働きに関わる
1.全身の細胞が働くためのエネルギー産生を支える
肺では、吸った空気から酸素を血液に取り込み、体で生じた二酸化炭素を外へ出しています。
取り込まれた酸素は、血液によって全身の細胞へ運ばれ、細胞が活動に必要なエネルギーをつくるために使われます。呼吸は、私たちが体を動かし、日々を過ごすための土台を支えているのです。
ただし、呼吸が浅く感じられるからといって、必ず酸素不足になっているわけではありません。健康な方が安静にしているときには、通常の呼吸でも必要な酸素が供給されています。深く呼吸するほど細胞の働きが高まる、という単純な関係ではありません。
また、必要以上に大きく、速く呼吸し続けると、血液中の二酸化炭素が減りすぎ、めまいや手足のしびれが出ることがあります。呼吸は「たくさん吸えばよい」というものではないのです。
2.自律神経や脳の活動と関わり、心身を落ち着かせる手がかりになる
緊張や不安が強いときには、呼吸が速くなったり、胸や肩に力が入ったりすることがあります。
呼吸は自動的に続く一方で、自分でもある程度調節できる働きです。ゆっくり穏やかな呼吸は、体のリラックス反応を促す方法のひとつとして使われています。
呼吸は、神経の働きとも関わっています。ゆっくりした呼吸練習によって、心拍の間隔のゆらぎに変化が生じることが報告されています。これは、呼吸と、自律神経による心拍の調節との関わりを考える手がかりです。ただし、その変化だけで自律神経全体の状態を判断することはできません。
また、人の脳を調べた研究では、呼吸のリズムと、感情や記憶に関わる領域の電気的な活動が連動することも示されています。呼吸は空気の出入りだけでなく、脳の活動ともつながっているのです。
こうした研究は、深呼吸によって神経の信号が速く伝わるようになることを示したものではありません。それでも、呼吸が体と心を結ぶ大切な働きであることが、少しずつ明らかになっています。
呼吸法の研究では、ストレスや不安の軽減が報告されていますが、研究の質や方法にはばらつきがあります。また、特定のゆっくりした呼吸法が、別の呼吸練習より優れているとは確認できなかった研究もあります。
「この秒数で呼吸しなければ」と考えすぎず、ご自身が落ち着けるペースを見つけることから始めてみましょう。
眠りについても気になる方は、関連記事「更年期に眠れないのはなぜ?夜中に目が覚める原因とセルフケア」もご覧ください。
3.胸やお腹の動きに気づくきっかけになる
息を吸うときには、肺の下にある横隔膜が下がり、肋骨の間の筋肉も働いて胸の空間が広がります。息を吐くときには、それらが緩みます。
肩を持ち上げて吸い込むのではなく、胸やお腹が自然に動く感覚に目を向けてみてください。呼吸のしやすさを観察することは、体に入っている余分な力に気づく手がかりにもなります。
東洋医学の視点:呼吸を、体全体の働きとして見る
東洋医学では、呼吸を肺だけの働きとしてではなく、全身の状態や心の動きと結びつけて捉えます。
ここでいう「気」や「肺・肝・腎」は、東洋医学の伝統的な概念です。気は酸素そのものではなく、肺・肝・腎も現代医学の臓器と同じ意味ではありません。
1.「肺」:呼吸と、全身の気の働きに関わる
東洋医学では、気を生命活動を支える働きとして捉え、呼吸と食事によってその働きが養われると考えます。
「肺」は呼吸を担い、全身の気の流れを統括するものとされています。この考え方では、呼吸の状態は、体全体の働きを知るための大切な手がかりになります。
2.「肝」:気持ちの緊張や、体のこわばりに関わる
「肝」は、精神活動の安定や筋肉の緊張などに関わると考えられています。
東洋医学には、気の働きが滞った状態を「気鬱(きうつ)」などとして捉える考え方もあります。 気持ちの張りつめ、喉のつかえ感、体のこわばりなどを、別々のものとしてではなく、関連する状態として見ていきます。
呼吸をみるときにも、忙しさや気疲れなど、日々の過ごし方に目を向けます。
3.「腎」:呼吸を支える土台にも関わる
「腎」は、成長や加齢などに加え、呼吸の働きを維持するものとしても捉えられています。
そのため、呼吸の状態だけでなく、疲れやすさや年齢に伴う変化なども含めて、体全体を見ていきます。
こうした伝統的な見方は、体を理解するための枠組みです。「呼吸が浅いから肝や腎が悪い」と判断したり、現代医学の病気を診断したりするものではありません。
今日からできる、やさしい呼吸の時間
忙しい日の合間に、短い時間でも呼吸に目を向けてみましょう。
背中を支えられる椅子に座るなど、楽な姿勢をとります。
肩やあごの力を抜き、締めつける服を少し緩めます。
鼻からやさしく吸い、鼻か口から穏やかに吐きます。
息を止めず、苦しくならないペースで繰り返します。
まずは数呼吸から。心地よければ、少しずつ時間を延ばしてみてください。
お腹を大きく膨らませようと頑張ったり、最後まで吐き切ろうとしたりする必要はありません。めまい、しびれ、息苦しさが出る場合は中止し、自然な呼吸に戻しましょう。
呼吸のしやすさを大切にする、meguruの鍼灸
札幌市東区のはり・きゅうmeguruでは、呼吸の様子や首・肩の緊張なども、お身体の状態を知るための手がかりとして大切にしています。
やさしい鍼やお灸を用い、お一人おひとりに合わせて刺激量を調整しながら施術します。
「いつも肩に力が入っている」「休んでいても気が張っている」。そんな方も、お身体を休ませる時間としてご相談ください。
呼吸を深くしようと頑張る前に、安心して力を抜ける時間を。ご自身の呼吸の心地よさに、そっと目を向けてみませんか。
※息苦しさが続く場合は、呼吸法だけで対処せず医療機関にご相談ください。突然の強い息苦しさや胸の痛みがある場合は、速やかな受診が必要です。




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